SAFARI REPORT

サファリレポート

絶滅するということ

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人類は絶滅する。

明日ではないが、いずれする。
ノストラダムスは外れたが、いずれする。地球消滅のタイミングと同じになるのか、それよりずっと前になるのか、、、。
そして、なにより、そんなことは46億歳の地球にとって、どうってことのないことなのだ。恐竜が絶滅したときに、地球が動じなかったように、人類が地球の表面から消えても、地球はただ、これまでと同じように、回り続け、季節は巡る。

この46億年の間に、地球上に誕生した生物種の9割以上が誕生しては消えていった。地球上の生物の2割以上が死に絶える事件が5回もあった。中には95%が滅びたたことも。
恐竜もいなくなったし、ネアンデルタール人もいなくなった。ある古生物学者は、「絶滅するのが生物の運命であり、生き残るの方が例外」と言った。

絶滅とは、どういうことなのだろうか。その道の先輩方の例を見ながら、考えよう。

クロサイの例

20世紀はじめには、アフリカ大陸に数十万頭いたが、1960年代には7万頭、95年には2500頭となり、96%減。最大の原因は、角を求めた密猟。動物側の要因としては、繁殖が非常にデリケートで、妊娠期間が2年近くにもなる。これが、一度減った数をなかなか取り戻せない原因だ。
30人のクラスだとしたら、ある朝、クラスメートが減り始め、気づいたときには、1人になっていたという計算だ。どんな気持ちなのだろう。最近、隣近所が減ったナーなんて思ったんだろうか?人間が角を求め、盛んに狩りをしているとウワサが届いたのだろうか?

リカオンの例

ラテン語で“色を塗られたオオカミ”を意味するリカオン・ピクタス。個体ごとに模様が異なり美しい。しかし、数百年前から、ただの野犬だと思われ、いかにも楽しげに群れで狩りをする姿が残酷だという理由で、その場で射殺することが許された。
また、群れは30頭と大きくなるため、大きな生息域が必要だ。人間の進入で、今ではそのような自然も少なくなり、アフリカで最も絶滅が近いイヌ科となった。

種がなんであれ、環境変化に適応できなくなったものが、数を減らしていく。そして、繁殖のスピードが、減少スピードに追いつかなければ、絶滅する。彼らは何も語らないが、数の変化は、そんな生息環境の変化を示している。そして、動物が全くいないような環境では、人間も生存できない。

環境問題を語るときに、よく「動物保護」という言葉が出る。しかし、むしろ人類のためなのではと思う。確かに、自然環境を人間のように変化させることができない動物が、先に滅びるので、「動物のため」に環境を守ることが、ひいては「人間のため」になるが、究極的には、人間保護、人類保護なのだろう。
また、多くの種の動物が生きるということは、 それだけ頑丈な食物連鎖ということ。ひとつの種の草食動物がいなくなっても、肉食動物は、他の草食動物を食べていけばいい。

その意味で食物連鎖の頂点にいる、大型動物のチェックは重要だ。頂点の大型動物が多くいることは、彼らを頂点とした食物連鎖のピラミッドが強固で、安泰な自然を意味しているからだ。

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ここ数百年、絶滅種の数はウナギのぼりに増えている。これは同時に、人間にとっても何万年も生きた生息環境が変化していることを告げている。「英知を極めた」人類が自らの手で、生きずらい生息環境を作っているとすれば、それは、ドジなことだ。それは、長い時間をかけた“自殺”だろう、、、、。

……なんて、ボーっと考えながら、サバンナで必死に生きているヤツラをみていると思う。

“自殺はいかんなー。彼らは自殺はしない。”

2008年8月
ンゴロンゴロにて ケンタロー

 

ケンタロウ

野田健太郎
FGASA(南アフリカフィールドガイド協会)公認フィールドガイド、トラッカー。日本エコツーリズム協会会員。 元通信社記者。2008年からタンザニアに在住。「日本語で楽しく分かりやすく」と現地でサファリガイドを始める。インタープリターとして旅行者を案内し現地のオモシロ話を伝える一方、NHKの自然番組の撮影コーディネーターとして、大自然の神秘を映像を通じて届けている。

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