大きなイチモツとハンディキャップ理論
「あいつはチンチンがデカイらしい」
修学旅行中に、そんなことがバレようものなら、
どうだろう。
次の日にはクラスのウワサ、帰るまでには学年中のウワサになるだろう。
イチモツの大きさはそんなに重要なことなのか?そんなに関心を集めるのはなぜなのだろうか?
自然界でもそうなのだろうか。
自然界でチンチンをチェックして、繁殖相手を決めているという研究は見当たらないが、実際見ていると、タテガミや象牙、角など、大きいモノを持ったオスが多くのメスを引き連れていたり、多くの子を持っていたりする。
ゾウやバッファローのメスは、象牙や角の大きさ、また、ライオンならタテガミの大きさにメスは惹かれているようではある。
そこでこの通説を科学的に検証した研究があった。
それは、東アフリカに住む、コクホウジャクという鳥を対象に行われた。
この鳥はスズメくらい大きさだが、オスは繁殖期になると、尾の羽を伸ばし、体の何倍の長さになり、メスの前で求愛のダンスをする。
学者は、何羽か連れてた鳥の長い尾をハサミで切り、人工的に尾を伸ばし、もとの縄張りに戻した。
すると、人工であっても一番長い尾を持ったものが、一番繁殖回数を増やした。ニセモノであってもの、
でかいヤツがモテたのである。
しかし、これは自然界の理屈に反しているようにも思える。ダーウィンは進化論で、
よりスマートに、周囲の環境に適合したものが、生き残ると書いた。
しかし、あまりに大きな角や長い尾は、邪魔になっても、食料を得るのに特別役立っているとは思えない。
角がスパイラル状になったインパラなんかでは、決闘の際に、角が絡まったまま、
身動きが取れなくなり、そのまま、二頭とも、共倒れしている写真を見たことがある。
あまり大きいのは不便だ。第一、より環境に適応した者が、
生き残ると解いた進化論に反するように思える。
これは、ダーウィンを始め、多くの学者を悩ませた。
自身が提唱した理論でも説明がつかなかったのだから。
そこで、大きなイチモツを“ハンディキャップ”として説明したのが、
「ハンディキャップ理論」だ。
厳しい自然の中で、その余計な負荷、ハンディを抱えながら、生き抜いていること。
そこまで栄養分を行き渡らせていることが、強さの証で、ありあまる生命力と身体能力の表れ。
そこにこそ、メスは本能的にそこ惹かれるのだと。
そこで僕も考えた。
ドギツイ指輪をした極道も、キンキラ金のネックレスをしたヒップホップ・ミュージシャンも、
ゆとりや富を誇示するため。つまりは、「ハンディキャップ理論」?!“オンナ”もそれに惹かれるの?
2008年7月
マニャラ湖にて ケンタロー
野田健太郎
FGASA(南アフリカフィールドガイド協会)公認フィールドガイド、トラッカー。日本エコツーリズム協会会員。 元通信社記者。2008年からタンザニアに在住。「日本語で楽しく分かりやすく」と現地でサファリガイドを始める。インタープリターとして旅行者を案内し現地のオモシロ話を伝える一方、NHKの自然番組の撮影コーディネーターとして、大自然の神秘を映像を通じて届けている。